アスター王子がファルコをこちらの横に寄せてくると、顔を近づけて耳打ちしてきた。

「ミリィ、震えていたが大丈夫か?寒いならば上着を貸すが」

眉を寄せて心配そうな眼差し……。
こんな大切な時にまで、彼にこんな心配かけてはいけないな、と改めて心する。

「ご心配おかけして申し訳ありません。寒いのではなく、武者震いです。自分が奮い立って……いよいよわたしが認められると思ったら、嬉しくて仕方ないのです」

なるべく馬鹿正直に、アスター王子には伝えておいた。
彼とは、隠し事等無いようにしたい。

自分が今なにを考えて、どんな状況なのか。
将来夫婦となるのだから、どんな恥ずかしい事でもきちんと伝えたいし、伝えて欲しい。

わたしのその想いが伝わったのか、アスター王子は心配げな表情を和らげると「そうか」と呟いて、フッと微笑んだ。

「さすが、ミリィだな。肝の据わり方が半端ない。オレが唯一惚れた女だけある」

急にそんなことをサラリと言われて、顔に熱が集まってしまう。絶対、ほっぺたが真っ赤になった自信がある。

「……、そんなこと、急におっしゃらないでください!」
「だが、事実だからな」

わたしが抗議をしたところで、アスター王子はどこ吹く風。なんだか憎らしいほど、余裕の笑顔で…。

なにか吹っ切れたかのように、最近彼は甘い言葉を口にするようになってきていた。