ちなみに、わたしが着ているドレスはレディアンジェラの特別デザインだ。

通常のドレスだと馬に乗る時は横に座る横座りスタイルになるし、馬具も専用のものになるけれども…。
わたしはドレスでもアクアに普通に騎乗したいから、とレディアンジェラに無理難題を言ってしまった。

でも、さすがレディアンジェラ。

スカートを左右に分けてズボンのようにするキュロットスタイルにして、なおかつ普通のドレスに見えるようたくさんの工夫をしてくれた。

騎士の通常の騎乗スタイルは、貴族令嬢にはありえないスタイルだ。脚を思いっきり開く姿勢だから、恥じらいを知るならば当たり前。だから、ドレスにしろ他のファッションにしろ、馬に乗るなら横に座る横座りが当たり前だし、周囲もそれが当然と受け止めてきた。

でも、とわたしは思う。

わたしは貴族令嬢であるけれども、騎士を目指す身分。そして、従騎士でもある。
王太子妃となり王妃となる覚悟はあるけれども、今までの王太子妃や王妃とは違う。
王族に入ると同時に、騎士であることも同じくらい大切だ。

だから。
あえて、婚約式の騎乗スタイルをいつもと同じにした。
そのためのドレスをレディアンジェラに依頼した時、彼女は「面白そうじゃない!新時代の王妃様のドレスを手掛けるなんてワクワクするわ」と目を輝かせてくれたんだ。