「よし、と!」

いつも通りに騎乗すると、慣れ親しんだ感触。
違うのは、自分自身がドレス姿ということだけ。

「アクア、行こう!」
「ビヒッ!」

すべて理解しているだろう愛馬は、わたしの合図でゆっくりと歩きだした。



当初、わたしとアスター王子の婚約式は、アルベルト殿下とソフィア公爵令嬢の結婚式があった大聖堂でそのまま行われる予定だった。

でも、アスター王子が国王陛下に違う提案をしたんだ。

“王族の前に騎士でもある私たちらしい式にさせてください”…と。

だから婚約式の舞台は格式張った教会や大聖堂ではなく、お城の大庭園で行われる。

もちろんゲストは各国首脳というVIPだから、警備や警護は万全を期す。普段張っている結界に加えて竜騎士やドラゴンが空を警戒し、地上では近衛騎士や騎士、兵士等が万端の体勢を敷く。

解放感あるオープン式の式典にしたのはアスター王子らしいし、わたしにもありがたかった。

みんなには自慢の愛馬であり、先の戦いで活躍した大切な仲間のアクアやブラックドラゴン、そして高祖母様や祖父母、叔母様たち龍騎士も見てほしい。そしてもちろん、あの戦いで活躍したマリア王女や新公爵となるフランクスもゲストとして出席してもらうんだ。