わたしは、王妃も騎士も目指す。

自分でも欲張りだと思うけれど……どちらも諦めるつもりはない。

だって、騎士になるのは昔からの夢であり、人生の目標のひとつ。なにがあっても絶対に譲れない。
そして王妃になることは、いずれ国王となるアスター王子の隣でともに生きるために必要なことだから。

アスター王子が好きだ、と自覚した時から覚悟は決めた。
どういった困難な道でも、自分が努力していけばいい。

そして、たまには他の人の力も借りる。それは、今までの戦いを通じて学んだことだった。


(アスター王子も…自分は英雄でない…と自虐してらした。英雄呼ばわりされることを嫌っていた本当の理由…それは、今までの戦いで大切な仲間をたくさん亡くしてきたから)

わたしにだけ見せた、彼の深い深い悔恨の念。
アスター王子でさえ、戦いの最中無力だと感じるほどに現実の戦闘は厳しいものだった。

そんな彼の役に立ちたい。あの時わたしは痛烈にそう感じた。

去年、わたしが馬上槍試合の訓練で落馬し怪我をした時…アスター王子はわざわざ湖のピクニックに連れて行ってくださった。その時…大好物のサンドイッチと懐かしいチーズを出されたけど……おそらく、あの時からすでに彼はエストアール家に通い、わたしの好物を聞いてらしたんだろう。その事実が、涙が出そうなくらい嬉しい。