お祖父様はゆっくり頷かれたあと、振り向いてご自身の娘……わたしにとってのお母様にこうおっしゃった。

「……だそうだよ、マリアンヌ。君の娘はしっかりとした意思で生き方を決めている。後は見守るだけが親の役割だ」

父親からそう言われたお母様は、控えめに微笑まれる。

「……お父様には敵いませんわね」
「昔から、マリアンヌは心配性だものね。ミリィがちゃんと王族としてやっていけるか心配なのでしょう?」

アリシアお祖母様もしっかりと愛娘の理解をしていて、なんだか素敵だなと思う。ただ、お母様を心配させてしまったのは不甲斐ない。だから、お母様に歩み寄るとこう伝えた。

「すみません、お母様……確かにわたしは昔から貴族令嬢としての教育から逃げていました。でも今はさすがに王族となる自覚はあります。きちんと妃教育も受けていますし、知ることが面白くなってきたところです。自分自身で決めてアスター王子と生きるのですから、中途半端な覚悟はしてません」
「……わかってるわ、ミリィ。あなたは一度自分で決めたらとことん突き進むものね」

でも、とお母様はこう付け足された。

「……心配だったの。去年、アスター王子と婚約された時、まだあなたは彼を愛しているようには見えなかった。彼は誠実に愛してくださっていたけど…ミリィ、もしもあなたがアスター王子を好きでいなければ…わたくしは婚約破棄まで考えていたの。やはり、娘のあなたには愛し愛される結婚をして欲しいのですから」