「そうです。私は、アリシアだから愛しました」

透き通るような声が聞こえて振り向けば、銀髪に水色の瞳を持った壮年男性が立っていらしたけれども、50を過ぎてもなお変わらない若々しく美しい容貌をしてらした。

「まあ、ヴァイス。今の黙って聞いていらしたの?相変わらず意地悪な方ね」

お祖母様が抗議されると、夫であるヴァイスお祖父様はクスリと笑われる。

「それは仕方ないですよ。アリシアは普段あまり言葉にはしてくださいませんから。私は毎日熱心に伝えてるつもりなのですが」
 
そうおっしゃったヴァイスお祖父様は、そっとアリシアお祖母様の手を取って微笑まれた。

「でも、今のあなたの言葉をお聞きして勇気づけられました。愛していますよ、アリシア」
「……こ、こんなところで言わないで!」

顔を真っ赤にされたお祖母様は……正直、めちゃくちゃ可愛らしかった。年齢なんて関係なく、お二人がどれだけ愛し愛されているか…がよくわかる。

「ミリィ、久しぶりだね」
「はい、ヴァイスお祖父様。ご無沙汰してました」

妻にしっかり愛情を伝えたヴァイスお祖父様は、改めてわたしに向き合ってくださる。お母様によく似た顔立ちで、アスター王子に負けないほどの美貌。幼い頃は眩しくてドキッとしたことがある。

「アスター王子との婚約、おめでとう。きっと君のことだから、きちんと彼自身を見て一生一緒に居ようと決めたんだろうね」
「はい」

ヴァイスお祖父様はいつも通り鋭くて、わたしの気持ちをズバリと当てる。だから、わたしも素直に頷いた。

「わたしは、アスター王子が王子だから好きになったわけではありません。彼が彼だからです。たとえ彼が庶民でどんな困難があったとしても、わたしは一緒にいます。自分自身でそう生きようと決めました」