そう。

わたしは、わたしだ。

お祖母様、お祖父様、高祖母様達…そして、エストアール家の祖先たる伝説の龍騎士ユリウス。皆それぞれ素晴らしい成果を挙げた方々だ。

尊敬に値する方々の血を引くことは誇りに思う。

でも、だからと言ってわたしが騎士や龍騎士そのものに相応しくなれたわけでは無いから。

騎士見習いとなってまだ1年と少しの今のわたしは、まだまだ未熟な従騎士だ。だから、最大限の努力を続けていくしかない。

そして、わたしは……。

アリシアお祖母様にこう訊ねてみた

「アリシアお祖母様……失礼かもしれませんが、お訊きしたいことがあります」
「あら、珍しいわね。なあに?」

白髪になったとはいえ、にっこり笑うお祖母様は相変わらず可愛らしい。40と言われても違和感ない若さだ。

「……ヴァイスお祖父様が王子だったからお好きになられたのですか?」

失礼極まりない質問をしてしまったにもかかわらず、お祖母様は怒ることなく首を横に振ってから答えてくださった。

「いいえ。わたしは……ヴァイスがどんな身分でも好きになっていたわ。たまたま彼が王子という身分に過ぎなかっただけ……でもね」

そして、お祖母様は驚くようなお話をしてくださった。

「ミリィ、わたしは本当は孤児だったの」
「……そうだったんですか」
「ええ。アリスお祖母さまが養女にしてくださったの……でも、わたしはそのことは恥じてないし、むしろ誇りに思ってるわ。ヴァイスも…わたしがわたしだから愛してくれたの…片思いで実らないと諦めていたのに…彼は、わたしを選んでくれたのよ。そんな彼だからわたしも愛したの」