たしかに、今までお祖母さまたちとはノプットの王都にあるタウンハウスでしかお会いしなかった。普通公爵家のタウンハウスならば、広大な敷地にお城と呼べそうなお屋敷は当たり前だ。

でも、ヴァイスお祖父様のタウンハウスは…ちょっと裕福な国民が建てるような一軒家。貴族王族がタウンハウスを建てる区画ではなく、富裕層の居住区…しかも庶民の居住区に限りなく近い場所に建てられていた。

部屋数はわずかに5つしかない2階建てのタウンハウスは、いつも優しい思い出に満ちていた。

“血筋や身分で人の価値は決まらない”いつもいつも、ヴァイスお祖父様が口にされていたこと。

お祖父様とお祖母様が、あえてわたしに王家のことを話されなかったということは……きっと、そういうことなんだ。

うん、とわたしは一人頷いた後に、顔を上げる。

「……それは確かに驚きましたし、素晴らしいことかもしれません……でも」

わたしは胸の辺りで両手を握りしめ、キッパリと言い切った。

「今のわたしはエストアールの娘であり、騎士を目指す従騎士です。お祖父様やお祖母様の身分や血筋はお祖父様たちのものです。それに、たとえお二人がどんな身分だろうと…わたしはお二人が大好きで尊敬しています。ですから、身分も血もわたしには意味がありません」