「ミリィ、次はオレたちの番だからな。だからその格好は…」

ローズ嬢がつつがなく役割を果たしていたことに安堵していると、わたしを一瞥したアスター王子に苦笑いされながら指摘されてしまいましたよ。

「……一応、忘れてはいませんでしたけどね」 

もはや諦めの境地というか……悟ったような無我の境地です。

今のわたしは白地の長袖シャツと上にはジャケット、ズボンにブーツという従騎士の制服を着てる。従騎士としては正式な正装だから、今日のような結婚式に着ても問題ない。
きちんと国王陛下やアルベルト殿下、ソフィア様にも確認を取ったし。

でも……これから挑む婚約披露の儀……それには、さすがにズボン姿で登場するわけにはいかない。身内だけならともかく、アルベルト殿下とソフィア公爵令嬢のご結婚に出席された国際的な首脳陣が臨席するんだ。だから、最近作り直したドレスを着ることになっている…のだけれども。

「……この格好じゃだめですよねえ」

最後の最後で悪あがきしてみたけど、アスター王子にいい笑顔で「ダメだ」とキッパリハッキリと断言されてしまいましたよ。

「うう……わかりました、腹をくくります。女は度胸ですから。でも、人前で着替えるのはやっぱり抵抗あるんですよねえ…しかも、人に着替えさせてもらうことが……人に裸を見せるのが趣味なアスター王子ならいいでしょうけど」
「おい、だれが裸を見せるのが趣味だ?」

なにか抗議が聞こえたけど、スルーしておいた。