驚いて振り向けば、金糸で刺繍された白い詰め襟の制服を着たアスター王子。きっちりと髪も整えて、靴もブーツではなく革靴。儀礼用の装飾がついた剣を帯剣してる。
いつもより凛々しい彼に、ドキッと胸が高鳴ったのがちょっぴり悔しくて。少々口調が強くなってしまいました。


「アスター王子、もうアルベルト殿下の介添え役は大丈夫なんですか?」
「ああ、兄上ももう休憩に入られたからな」

婚姻の儀ではアスター王子が兄アルベルト殿下の介添え人(アッシャー)の一人になっていたから、他の介添え人と同じ王族としての正装をしていた。
アルベルト殿下の介添え役は、全員王族ゆかりの方で5人。
ちなみに、ソフィア公爵令嬢の介添え人(プライズメイド)も、5人。学園時代から仲が良い御学友の、貴族令嬢。
そこで意外だったのは…ソフィア様が、トムソンの婚約者のローズ嬢をプライズメイドに選定されたこと。

同い年の彼女とは学生時代仲はよくなかったらしいけれども…(おそらく気の強いローズ嬢が張り合ってただけと思うけど)、ソフィア様はおそらくバーベイン侯爵の罪で没落した学友を気の毒に思い、救いの手を差し伸べたんだろう。
ソフィア様の友人だと広く公表するということは公爵夫人の後ろ盾があると公言したようなものだ。

「……ローズ嬢の様子はいかがでしたか?」
「立派に務めていたさ。まぁ、多少顔色はよくなかったが…彼女も立場は弁えている。新公爵夫人の心遣いを無駄にはしまい」

アスター王子からそう聞いてほっとした。ローズ嬢はかつて、アスター王子を好きだった。父親もアスター王子の妃にと画策していたけれど…ドン・コレッツイに関わったことにより犯罪に手を染め没落した。
わたしの同僚であるトムソンが実家の伯爵家に引き取り、婚約者となったんだ。