すると、頭に軽く重みを感じる。

伏せた視線を上げれば、ピッツァさんがニカッと笑ってこう言い放った。

「ま、いいんじゃねえ?自分自身が完璧じゃねえって思うなら、次はどうすればいいか考えるこった。そうやって実力を磨いてく方法、アタシは嫌いじゃないぜ?」

ポンポン、と頭を軽く叩かれて、これが彼女なりの励まし方なんだな…とちょっと嬉しくなる。

女性騎士は未だに少ない。その数少ない先輩からの貴重なアドバイスだ。わたしは勢いよく頭を縦に振って、返事をしておいた。

「はい!ピッツァさん、ありがとうございます」
「ま、アタシだって人のこと言えるほどの実力はねえけどな」

ニシシ…と笑うピッツァさんも、一見ちゃらんぽらんで自由奔放に見えて…実際とんでもない量の鍛錬をこなしているのを知っている。女性である以上筋肉を保つための鍛錬は休めない。男性以上に気を使わねばならないんだ。

「よし、ミリィ。今度、一緒に渓谷のトレーニング行くか!一泊二日だが相当充実した内容だぜ」
「はい、ありがとうございます!ぜひ」

ピッツァさんからのお誘いをありがたく受けると、なぜかマリア王女に白い目で見られた。

「……まったく……貴族令嬢として筋肉バカと呼ばれる脳筋になるではないぞ?特にミリュエールは王妃になるのじゃろ?きちんと妃教育も受けておるのか?」
「それはもちろん。ミリィは必要以上に努力してるさ」

マリア王女に答えたのはわたしではなく、聞き慣れた男性の声。いつの間にかアスター王子が後ろに立ち、フォローを入れてくれた。