「そうはおっしゃっても、一番の英雄はやはりミリュエールさんではありませんか?」

マリア王女の異母妹である第一王女のユリネ様が、そうおっしゃる。髪と同じオレンジのシンプルなドレスに身を包んだ彼女の黄金色の瞳は、なぜかいつもより輝いて見えた。

「英雄…ですか?」

馬鹿みたいだけれども、わたしはユリネ王女の言葉にはオウム返しするしかない。だって、わたしはピッツァさんみたいに目覚ましい活躍をした覚えがないのだし。

「なにを言っておる!ミリュエール、1週間前にそなたは王城でわらわの目の前であれほど目覚ましい活躍をしたではないか!忘れたとは言わせぬぞ!?」

マリア王女が興奮気味にそうおっしゃってますが……。

「……呪術師を捕まえたのはアスター王子ですし、兄上たるレスター王子をお助けしたのはマリア殿下ではありませんか。わたしは何もできていませんよ…むしろ、力不足であれだけ手こずって皆様にご迷惑をおかけしまいましたから…」

わたしは微苦笑をしながら、そう言うしかない。

そう。あの呪術師襲撃事件では、わたしはほんとうになにもできなかった。

「一見わたしが活躍したように見えたとしても、アクアやマリンやブラックドラゴン、アスター王子、マリア殿下、ソニア妃……たくさんの方の助力あってのことです。わたし一人の力でなし得たことではありませんから」

自分自身が、騎士としてどれほど実力不足だったか。それを思い知らされただけだった。