次々と湧く呪いの人形。短剣で斬れば消滅するものの、斬っても斬っても次が湧く。これでは堂々巡りだ。

(このまま戦っているだけではらちが明かない。レスター王子が持つ呪物をなんとかしなくては)

「ブラックドラゴン、レスター王子が持つ呪物についてなにか解る?」
『強力な呪力に阻まれて遠隔からでは判別しづらいが、おそらく身につけた品物にまぎれておるよ。それがどれかまではこちらからは判りかねるが』
「ありがとう。それだけで十分だよ」

ブラックドラゴンの助言を得てからレスター王子を観察してみる。無意味にキラキラ輝く迷惑極まりない輝きはともかく……
髪はいつもどおりにお気に入りらしい髪型にセットしてあるし、最上級だろう白いシルクに金銀の刺繍とスパンコールにビーズに宝石レースを散りばめたシャツ。ズボンは体のラインにぴったりフィットしたデザインで、キラキラと七色に輝く上にこれまた金銀宝石を散りばめてある。腰に巻いたサコッシュは繊細な柄で織られた豪奢なもの。上から羽織るジャケットも、金糸で織られてダイヤが散りばめられてる。
靴はたぶん最高級の皮を使ったブーツで、これまた刺繍つき。ゴテゴテとつけたブローチに、胸には薔薇の花。

無駄に贅を尽くしたファッションに「うげ」と変な声が出てしまう。

しかし、ひとつだけ。今まで見たことがないものがあった。

それは、耳元のピアス。

一見珊瑚のように見えるそれは、不気味なまでに血のように赤かった。