初めて、素直にアスター王子の言葉を聞こうと思えた。

今の今まで自分は理想的な騎士像に固執するあまりに、頑な過ぎたかもしれない。

「……ありがとうございます、アスター王子。わたしはちょっと頑固すぎましたよね」
「ああ、多少はな」

やっぱりアスター王子自身もそう思っていた事か。だが、と彼は続けた。

「ミリィの他人には限りなく優しいのに、己に厳しい姿勢は嫌いじゃない。騎士の中には名声を得た途端に堕落していく者もいる。その点、おまえはなにがあってもブレることはないだろう。自分自身を律す厳しさはオレでも尊敬できるほどだ」

また、アスター王子がわたしを褒めてくださった。わたしを認めてくださるのは嬉しいけれども、褒められ慣れていないから、恥ずかしすぎてついつい彼に厳しい口調で言ってしまう。

「そ、そんなにわたしは大したことはしてません。騎士であるならばあたりまえな事ばかりですから。それに、まだまだあなたには敵いません。自分自身未熟者だと理解していますから、自分を律し最大限の努力をするのは当然です」
「そうだな。だから、皆ミリィを信頼している。今までおまえがしてきたこと……決して無駄ではなかった」

アスター王子が意外なことを告げてくださった。

「瘴気のドラゴンの正体は、呪縛されたシードラゴンだった。ブラックドラゴンの浄化で正気を取り戻した後は今回の件に限り協力を約してくれた。地下水脈すべての護りを万全にしてくれるそうだ」