アスター王子がおっしゃることはわかる。
わかるけれども、やっぱりわたしは自分自身が不完全なのが許せない。

「ありがとうございます、アスター王子。でもやはり、わたしはこんなやり方でなければ騎士を目指せません。それ以外ですと、わたしのなかにある芯が折れてしまいそうで……怖いんです」

堅物だろうが頑固であろうが、わたしはこの基本的な姿勢を崩すつもりはない。
もともと、騎士を目指すのに女性であるという性別だけで不利なんだ。男性が一度でこなせる事も、何度も繰り返さねばこなせない。肉体的な不利は努力でしか埋められないんだ。

騎士であろうとする姿勢も同じだ。
より完璧を目指さねば、騎士でなくなる。

「……そうか、わかった」

アスター王子は若干控えめな声でそう言った後に、突然わたしをぎゅっと抱きしめてきた。かなり力強く息苦しくなるほど。しかも、頭をぐりぐりと撫で回してくる。

「ちょ…アスター王子!」
「ミリィ」

わたしが逃れようともがいてると、彼から意外なひと言が放たれた。

「やはり、おまえはミリィだな。だから、オレはおまえを認める。おまえ自身が厳しく自分を律し、たゆみない努力を続ける……決して妥協しない。それだからオレは、おまえに惚れたんだ」