「うおっほん…それはともかく、だな」

あ、アスター王子が咳ばらいで誤魔化した。
まあ、今は彼の変態っぷりを追及する時間ではないから、それは後に回しますか。(そのままにするとは言わない)

「生身の人間である以上、こうやって何かしら欠点はあるものだ。一人ですべて完璧な人間はいない」

なんとなく、アスター王子の言いたいことは解る。

「つまり、完璧にあろうとするな……ということですね」
「完璧を目指すなとは言わない。それ自体は素晴らしい目標であるし、より高みに努力しようとする。実際に頑張るおまえは誰より騎士に向いている。だが、一人では限界がある。それは生身の人間である以上仕方ないことだ。自分自身の力量を正確に把握し、周りの協力を仰ぐのも騎士に必要なスキルだ」

アスター王子の言葉は、今のわたしの心に沁み入る。
確かに、今回の襲撃でわたし一人ができる事に限界はあった。瘴気のドラゴンすら撃退しきれず、不甲斐ないことに途中で気を失ってしまったのだから。

「自分自身の力量を…正確に把握……そうですね。今回、わたしは襲撃を防ぎきれなかった。もっと他にやり方はあっただろうに」

わたしがそう呟くと、アスター王子は「違う!」とわたしの肩を掴んだ。

「ミリィは個人でできる最大限の努力をした。瘴気のドラゴンをあそこで食い止めねば、王宮全体が瘴気に汚染されて、それを吸い込んだ人間が敵の思うままにコントロールされる可能性があったんだ。おまえは頑張って仔馬や皆を助けたんだ。少しは自分自身を認めてやれ」