「そんなことはない。ミリィ、おまえはいつも自分を卑下するが、もっと自分自身を認めてやれ」

アスター王子がわたしにそんなことをおっしゃる。
自分自身を認めろ……と言われても。自分が理想の騎士の姿からまだまだ程遠いのに、そんな現状で自分を認め満足してしまったら、努力していくモチベーションがなくなってしまう気がする。
だから、こう答えるのがあたりまえ。

「そうですか…?わたしは、自分自身がまだまだと理解していますから、簡単に認めるわけにはいきませんが」
「……その考えは素晴らしいが……そうじゃなくて、だな……」

アスター王子はちょっと苛立った様子でわたしの肩を掴むと、やや強引に身体を彼の方へ向けさせられた。

「もっと、自分を褒めてやれ」

また、聞き慣れない言葉がアスター王子の口から飛び出した。だから、わたしは半ば鸚鵡返しで呟く。

「……自分を、褒める……ですか?」
「ああ。こんなに頑張ったなら、よくやった!えらいぞ!と自分を褒めるんだ」

アスター王子は、また難しいことをおっしゃる。だから、思わずこう返していた。

「……わたしは…なにも。今回もなにもできませんでしたから、褒めるなんて……」

自分自身を認めろだの褒めろだの、アスター王子はおかしい事ばかりおっしゃる。なのになぜか、彼はわたしの顔を覗き込んできた。

「……わかった。なら、とりあえずオレがおまえを褒めてやる」
「……は?」