うん、やっぱりアスター王子は目を見開いたまま固まっている。面白いくらい純情(ウブ)な反応。
そして、彼の赤くなっていた顔がさらに茹で上がり、耳まで赤く染まる。

「たまには……お礼を、と思いまして。あなたは頑張ってくださいましたから」

そう彼に伝えたわたしはちょっとだけ、イタズラっぽくからかう気持ちもあったかもしれない。
予想どおりにフリーズしたアスター王子の反応に、思わず口もとが緩んでしまう。
でも、ちょっとだけ……ほんの少しだけ、彼を甘く見ていたかもしれない。

「……そうか。それを言うならば、ミリィも今回頑張ったな」

しばらくしてからアスター王子が笑顔でそんなふうに返してくるから、なんとなく不穏な空気を察してすぐ否定しておいた。

「いえ、今回わたしはなにも。ブラックドラゴンやアスター王子や高祖母様等の助力があって、のことです。わたし自身は歯がゆいほどなにもできませんでしたから」

これは、心の底からの本音だった。

わたしがしたことは、アクアと仔馬が逃げることを手助けしたくらい。それも、最終的にはブラックドラゴン達がいなければ瘴気のドラゴンを撃退できなかった。自分自身の無力さが、悔しくて歯がゆい。自分の実力不足を痛感せざるを得なかった。