私が声をかけると、少し前を歩いていた綿名が軽くこちらに振り返った。



 「なに?」



 細くてフワッとした髪が揺れる。



 「いつも色々助けてくれてありがとう。…でも、なんで助けてくれるの?」



 私は普通に疑問に思ったことを聞いたつもりだったけど、言ってから段々と恥ずかしくなってきた。



 「あ、やっぱり私よくうっかりしてるから?」



 恥ずかしさを紛らわす為に、少し笑って冗談ぽく言った。 


 綿名には、いつもみたいなクシャっとした笑顔で「そうだよ」と、軽く返されると思っていた。


 だけど、綿名は今までみたことないような、穏やかな笑顔で



 「俺が昔、日乃(ひの)に助けられたから」



 と、言った。