「行ってきまーす!」

 と大声で言い、玄関を飛び出した。


 目覚まし時計をかけ間違い、寝坊をしてしまった私は、全速力で学校に向かって走っている。


 よりによって卒業式の日に寝坊するなんて。


 何とか式に間に合わせようと急いでいると、



 「ニャー」



 という声がどこからか聞こえてきた。


 え?何の声?


 私は走っていた足を止め辺りを見渡す。


 すると、私の足の近くに猫がいた。フワッとした白い毛の小柄な猫。


 よく見ると、ガードレールの間に体がすっぽりと挟まってしまって動けなくなっているようだった。



 「ちょっと待って。すぐに取ってあげるね」



 私はそう言い、猫を引っ張ると


 
 「ニャァッ!」



 と、痛そうに鳴かれてしまった。

 

 「ご、ごめん。痛かった?…あ!毛が引っかかってるのか…、しょうがない。毛を少し切っちゃお」



 筆箱からはさみを取り出して猫の毛を少し切る。


 絡まっていた毛が取れたお陰で、ガードレールからすんなりと猫を取り出せた。