え…



 なんで綿名(わたな)が私がフルートやってること知ってるの…?



 だって誰にも言ってないのに…



 思わず、歩いていた足が止まる。


 綿名は止まった私に気付かずに歩き続けていた。




 「ねぇ、綿名」



 呼びかけると、すぐに振り返ってくれた。


 綿名はそこで、私たちの間に距離が空いていたことに気付いたらしく、慌てて私の方に戻って来てくれた。



 「ごめん、止まってたの気付かなかった。どうしたの?」



 綿名が少し首を傾げて私を見る。


 その仕草を見て、あれ?どこかでこんなような仕草、見たことあったな、と思った。



 「なんで、私がフルートやってるって…知ってるの?」



 もしかして、綿名もあのフルート教室に通ってて、たまたま私のこと見かけたとかかな?


 そう思って綿名を見ていると、綿名はキョトンとした顔になった。




「え?どうしてって、日乃(ひの)が俺に教えてくれて…」




 そこまで言ってから、綿名は「あっ!」と驚いたような、慌てたような顔をした。