キーンコーンカーンコーン

 
 授業が始まり、筆記用具を取り出そうとした時、あることに気が付いた。


 あ、筆箱を忘れちゃった。


 私は心の中で、テヘッとベロをだす。


 こうしたうっかりはよくあるからもう慣れた。


 誰かに言ったら「慣れる前に直せ」って言われそうだけど。

 
 ペンか何かが運よくリュックの底に落ちていないかな、とリュックをあさっていると、


 ぽんぽん、と後ろから肩をたたかれた。



 「日乃(ひの)、どうしたの?」
 


 細い髪をふわっとさせた可愛らしい男子が、目を丸くしてこっちを見ている。



 「それが、筆箱を忘れちゃって…」



 私が微妙に笑いながら言うと



 「じゃあ貸してあげるよ!俺シャーペン2本持ってるし!」



 と、なぜか嬉しそうな笑顔になって、はい、とシャーペンを渡してくれた。



 「ありがとう、綿名(わたな)!」



 お礼を言うと綿名はますます笑顔になった。
 


 「どういたしまして!」