「咲坂、大丈夫か?」


「う、うん……ありがとう……!」


「おい、お前ら。次に咲坂をこんな目に合わせたら許さないからな。覚えとけ。行くぞ」


「あ、橘くん!?」



咲坂の腕を引っ張ってその場から立ち去る。俺は敵に塩を送るような格好になってしまったと思ったがそれ以降は特になにか言われたり追いかけられたりしなかったから気にはとめなかった。


だいぶ人気のない廊下まで歩いてきた。


そろそろいいか。


掴んでいた手を咲坂から離す。すると……



「橘くん、怖かったぁ……」


「え?」



まるで甘えるような、甘ったるい声色でそう言うと突然俺を抱きしめる。


ぎゅっと力強く、離さないと言わんばかりに強く抱きしめる。


その瞬間ゾッと背中に寒気が走る。



「お、おい!やめろ、咲坂!」


「私のこと名前で呼んでよ。私も伊織くんて呼ぶからさぁ。それにそんな怖がらないでよ。私たち仲良しじゃない?」