この声……聞いたことある。


もしかして……。



「咲坂!?」


「橘くん!?」



音のした方へ歩くと咲坂が数人の女子生徒に囲まれているのが目に入る。


俺はその光景に息を飲む。


この光景、見たことある。前に空音も同じことをされていた。俺が関わっていたせいで苦しい思いをしていた……。


それが咲坂もだなんて。


……助けないと。



「おい、お前ら、咲坂に何をしている」


「た、橘伊織……くん!こ、これは……」



咲坂が狙われているこの光景。空音が襲われていた時のことと重なって、勝手に体が動いていた。


普段なら通り過ぎてしまうけれど咲坂は……助けなければと思った。


この思いには特に何も意味は無い。


困った人がいたから自分のせいで嫌がらせを受けている人がいたから助けただけ。


ただそれだけなのにこれから地獄が始まるとは思いもせずに……咲坂を助けてしまった。