みんなが帰って、何時間経っただろう?

睦海は賢司さんが一緒に連れて帰ってくれてしばらく預かってくれる事になった。

部屋には私とそーちゃんの二人。





頭を撫でられて…



私は目を開ける。

いつの間にか椅子に座りながらベッドにもたれ掛かるように寝ていた。

顔を上げて目を見開く。

「そーちゃん!」

そーちゃんはじっとこちらを見つめていた。

顔が青白い。

でも、そーちゃんは少しだけ微笑んで。



私は、ごめん。

そのはかない笑顔に耐え切れなくなって、泣いてしまった。

ホント、泣き虫でゴメン。





「そう…勝ったんだ」

そーちゃんは自分が優勝した事を覚えていなかった。

それくらい、意識は朦朧としていて、ただ覚えていたのは

『絶対に転倒するな』

という賢司さんの言葉。

後は自分の感覚を大切に、たったそれだけで走行していた。



「そーちゃん」

涙が止められないまま、私は続ける。

「今回はそーちゃんの意志を尊重してレースに出したけど…しばらくはお願いだからゆっくりして!
来年春まではレースもないし」

そーちゃんは黙って聞いていた。

「もし、今度周りを振り切って無茶をしたら…」

私は頬を膨らませて

「リコンだからね」