「本当に、良かった。
あとは無事に生まれてくるのを祈るしかないね…」

賢司さんは口元に笑みを浮かべて目を閉じた。

その瞬間、我慢していたのに。

涙がこぼれた。

心配させちゃいけないから、慌てて涙を拭く。



ダメだなあ、私。



すぐに泣いてしまう。



「あれ?真由ちゃん」

学校帰りの祥太郎くんが現れた。

「来てたんだ」

鞄を椅子の上に置くと祥太郎くんは賢司さんの元へ行き

「今、来たよ」

呟くと賢司さんはゆっくりと目を開けた。

「祥太郎、か…」

少しだけ笑みを浮かべてまた目を閉じた。

祥太郎くんはぐっ、と唇を噛み締める。

聞けば。

学校からの帰りは毎日立ち寄っているらしい。

「あれ?来てたの?」

更にそーちゃんがやって来て。

そーちゃんは所用で外出した時に必ず立ち寄っている。

「帰りは二人とも、送るから」

そーちゃんは控えめに笑った。