「真由ちゃん、いらっしゃい!」

今日はそーちゃんが働くお店、「K−Racing」に行った。

社長であり店長であり、レースでは監督もする柏原 賢司さんが笑って出迎えてくれた。

本当は高校を卒業したらここで働く予定だったのに。

妊娠、出産で結局働けず。

たまに店番をするのとレースでレースクィーンをするくらい。



賢司さんは

「それだけでも十分だよ」

って言ってくれるけど、心苦しい。



「ジー!!」

抱っこしていた睦海が手足をバタバタさせて喜ぶ。

「むっちゃんも、いらっしゃい」

賢司さんは睦海を私の腕からそっと取り、抱き上げた。

「キャアキャア!!」

睦海、喜びすぎ…



それを見ていたスタッフが皆、笑っていた。



賢司さんにとっては。

睦海は初孫だから、度々お店に連れてくるようにしている。

「…早く、そーの本当の子供も見てみたいよ」

賢司さんは睦海をあやしながら私を見て呟いた。

私はキュッと口元を上げて

「そーちゃんは…いらないって言います」

出来るだけ笑顔で言ってみたかったけど、無理だった。