「最終戦まで、もつかどうからしいよ」

帰りの車内で、そーちゃんは呟いた。

「そうなんだ…」

私は窓の外の、流れる景色を見つめた。

今、そーちゃんの顔を見ると。

泣いてしまう。

だから、唇を噛み締める。



私にとっても、そーちゃんにとっても親同然の人がいなくなる。

まだまだ、一緒にいてほしいのに。

神様は時に残酷な運命を人に投げ付ける。

賢司さんがいなくなる事は、お店『K−Racing』にとっても危機で。

いくら店長がそーちゃんに代わっているとはいえ。

まだまだ信用はない。

これからどれだけの努力が必要なんだろう。

そう考えるとゾッとする。



そーちゃんはライダーとして現役を引退しても。

その後に待ち受けている数々の試練がありすぎて息つく暇もなく、動かなくてはいけなくなる。



平穏、なんて言葉なんか。

そーちゃんにはないような気がして。

それもまた、私のテンションが下がる一因だ。