「1周だけ、走ってみるよ」

そーちゃんは笑った。

でも、その笑みは氷のように冷たい。

「…そーちゃん、何かあった時では遅いよ?」

至さんは少し怒ってそーちゃんを止める。

「そーちゃん、3人子供が生まれるっていうのに、俺はこのレースの為だけにお前を死なせたくない。
家族の事も考えろ!」

厳しい言葉が投げ付けられた。



「総一」

あまり動けない賢司さんが椅子から立ち上がるとそーちゃんに向かって歩き始めた。

「今回は止めろ」

肩をポン、と叩かれてそーちゃんは息を吐いた。



1周も走らせずにリタイアなんて。

今までなかった。