——あの中庭の出逢いから、すぐに話が来た。

無論、婚約話だ。

私はそれでも足掻いた。必死に頑張った。

親には「荷が重い」「向いてない」と、散々主張したし、皇子本人にも「お友達でいたい」「臣下としてお支えします」と言い張った。

更に、私は記憶をちょっと改竄して両親と皇太子殿下、皇帝陛下と皇后陛下に伝えた。

曰く、『何度も何度も同じ予知夢を見る。皇太子殿下は異世界から召喚される女性と恋に落ち、彼女を皇太子妃に迎える』と。

それは、皇家に衝撃を与えた。
不定期に起こるスタンピードを予見した神殿から、『聖女召喚』の許可を求める申請が上がってきていたからだ。

あながち、子供の戯言と切って捨てる訳にもいかない。

でも、私が頑張ったように、エドウィンも頑張った。
それはもう、本当にしつこく食い下がった。
皇太子妃は私以外考えられない、他の者に心を移すことはない、側妃も絶対に取らない、寧ろ私以外とは結婚しないとまで言い放った。

私をはじめ、宰相のおじさま、皇太子側近のお兄様方も、先のことはわからない、聖女も魅力的な女性だ、聖女を皇家に取り込むことは国益にもなる、等々散々説得を試みたが。



結局、どちらも譲らず。

お互いの家も、決めてしまうには時期尚早ということに落ち着き。
でも対外的に、皇太子に婚約者が居ないというのは、民心が安定しない。

落とし所として私の立場は、『筆頭婚約者候補』となっている。

一応、皇家と公爵家で、婚姻について契約書は交わされているし、皇太子妃教育も始まった。
『婚約者』と変わらない扱いだ。