次第に話し合いはララルス侯爵家の今後にについてどうするか。という旨に変わった。寧ろこれが本題、この為にアルブロイト公爵とテンディジェル大公と四大侯爵家が一同に会したのだ。
 皇帝陛下が不在なので、皇太子殿下を中心とした高位貴族達が各部署の部署長立ち会いの元でララルス侯爵家の今後の処遇について話し合う事になったのです。

 侯爵家以上の爵位を持つ家門に何かあった場合、こうして各家門の当主を招集して多数決での会合を行うように。と言った決まりがあるのだそう。
 特例として、絶対中立のシャンパージュ伯爵も毎度この場に呼ばれているそうです。
 説明を終えた私とシャンパージュ伯爵が席に座ると、「では早速議論といきましょう」とケイリオル卿が口を切った。

「まず前提として、現ララルス侯爵家当主モロコフ・シュー・ララルスより爵位を剥奪します。これについて何か意見はありますか?」

 ケイリオル卿が各家門の現当主達に意見を仰ぐと、

「アルブロイト、異議なし。あの男は四大侯爵家の当主の器では無いとかねてより言っていたからな」
「テンディジェルも異議はない。不貞は良くない」
「ランディグランジュ、異議なし。異議を申し立てる理由が無い」
「オリベラウズも当然異議なし! マリエルちゃんの方が当主に相応しいと僕は思う!」
「フューラゼ、異議は全くない。屑はさっさと死ね」
「シャンパージュ、異議なし。告発した身故、わざわざ言う必要も無いかもしれませんが」

 間髪入れずに彼等は即答していった。当主達の言葉に顎が外れそうな程愕然とする屑。
 その様子を見てクスクス、と笑いながらケイリオル卿が「はい、満場一致ですね」と手元の用紙に記してゆく。

「では続いてモロコフ・シュー・ララルス及びその妻カレンディティーナ・シュー・ララルスの処遇。折角ですのでその子供達ムルカプロ・シュー・ララルスとセジオリス・シュー・ララルスとミルバンス・シュー・ララルスの処遇についても決めましょうか。これについて何か意見はありますか?」

 随分とノリが軽いですね。しかし、皇太子殿下もケイリオル卿のそれには特に何も仰らないので、問題は無いのでしょう。
 そう、この空間の妙な不真面目さに疑問符を浮かべていたところで、フューラゼ侯爵がスっと手を挙げて、

「死刑」

 短くピシャリと言い放つ。それに続くようにオリベラウズ侯爵が、

「晒し首はどうだ?」

 顎に手を当て、真剣な面持ちでボソリと呟いた。

「待ってくれ、フューラゼ侯爵、オリベラウズ侯爵。これは恐らく処刑方法を選べという事なのだと俺は愚考する。それ故、個人的には噂に聞く処刑方法を試したい」
「噂に聞く処刑方法とはなんだ」
「その名も、真鍮の雄牛(ファラリス)なる魔導具を用いた処刑方法らしく、発祥はクサキヌアで中々の惨たらしさを誇る処刑道具らしいのだ。マリエル嬢を苦しめた者達には相応しい死かと」

 フューラゼ侯爵に言及され、ランディグランジュ侯爵はキリリと解説した。ランディグランジュ侯爵は何の勘違いをして何の提案をしているのでしょうか。
 どんな処遇にするかという話がいつの間にか処刑道具の話に変わってしまうなんて。