「私からお互いについて紹介するわね。こちらは友達のマクベスタで、こちらもまた友達のローズニカとレオナードです」

 ここは私が橋渡し役を担わなければ! と、意気揚々と他己紹介を行う。

「紹介にあずかりました、マクベスタ・オセロマイトです。アミレスの友達──いや、親友(・・)です」

 ニコリと微笑みながらマクベスタが挨拶する。何か凄く珍しい笑顔だな、初めて見たかもしれない。
 マクベスタも緊張してるのかなぁ。

「親友……!?」

 レオが何かにギョッとする。

「わっ、私はローズニカ・サー・テンディジェルです! アミレスちゃんの友だっ……し、親友です!」
「ローズ……?! あ、えと、俺はレオナード・サー・テンディジェルです。その、恐れ多くも王女殿下のご友人と認めていただきました」

 凄く気合いの入った挨拶をするテンディジェル兄妹。二人も新たな友達を作ろうと頑張ってるのね! 

「お二方の話は以前アミレスより聞きました。とても優秀な方とか……これからも、彼女の臣下として彼女に尽くしてくれると助かるよ。何せ、アミレスは無茶ばかりするからな」
「────ええ、勿論。時に、貴方様はオセロマイト王国の第二王子であらせられるお方ですよね。お噂はかねがね。何でも王女殿下とは鍛錬を共にする間柄とか……外野が口を挟むものではないとも思いますが、ずっと帝国に留まられて大丈夫ですか?」
「ああ、気を揉ませてしまったようですまない。オレの事は気にしなくて構わないよ、レオナード公子。オレとアミレスの関係だって、貴殿の気にするような事ではないだろう?」
「……ハハ、出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ございません。ただ俺も王女殿下の臣下として、王女殿下に付きまとう噂やその対外関係はどうにも気になってしまって」

 やけにキラキラとした笑顔で会話する二人を眺め、私は考える。
 皆、緊張してるんだなぁ。声にもかなり力が入ってるわ。共通の話題が私しかないから、私の話で頑張って盛り上がろうとしているみたいだし。
 もっと肩の力を抜いても大丈夫なんだけど……やっぱり初対面の相手との会話は緊張するものね、仕方無いか。私は皆を陰ながら応援するだけよ!

「頑張ってくださいお兄様……っ!」

 ローズもレオの事を応援しているようだし、私も応援しよう。頑張れ、皆!

「流石はアミレスだな。こんなにも忠義に厚い臣下がいるとは。尊敬に値するよ(特別意訳:分かってるなら臣民らしく身の程を弁えろ)」
「王女殿下の友人としてその立場に甘える事なく、王女殿下の力となりお仕えすべきと俺は思いまして(特別意訳:他所の王子の癖に親友だからって大きい顔するな)」

 何だかピリピリとした空気を肌に感じるものの、初対面の会話としては概ね問題なかろう。
 このまま仲良くなってくれたらいいんだけどなぁ……それにしても、いくら何でも私の話ばかりしすぎでしょう。もっと他に話題はないのかしら。

「……──本当に、このままこの顔ぶれでメイシア嬢に会いに行くのか……正気か?」

 妙な空気の中、マクベスタが消え入りそうな声でボソリと何か呟いた。しかしそれは馬車の音に掻き消され、私の耳に届く事はない。
 その後も暫く緊張した空気が流れ、夢想の宮殿(ロマンシア)に到着するまで和やかとは程遠い馬車道中となった。