「っぁ〜〜っ、あってるあってる〜〜!! いやぁマジで超似合ってるぜ! 天才、存在がマジで神! 世界に感謝!!」
「あ、あぁ…………そうか……」

 床でのたうち回りながら騒ぎ出したカイルを前にして、マクベスタは完全に引いていた。コイツどうしたんだとばかりにこちらに視線を向けて、マクベスタは私の格好にも気づいたようで。

「アミレス……その、似合ってるな」
「そう? ありがとう。貴方もよく似合ってるわ」

 未だに最推しの死神コスに悶絶するオタクは放っておいて、私達は談笑する。すると、程なくしてシュヴァルツとナトラと師匠が一緒に現れた。

「おっまたせー! ねーねー、おねぇちゃんっ、ぼく達の仮装はどうかなぁ?」
「くふふ、我のこの恐ろしい姿に震えるがよいのじゃ!」
「あ、姫さんそれ魔女ってやつですか? めっちゃ可愛いっすねー」

 ぴょこぴょこと動く黒い猫耳と尻尾をつけたシュヴァルツ。悪魔のような大きな角を頭につけ、引き摺るぐらい大きなマントをバサッと翻すナトラ。そして、いわゆるキョンシーのような格好の師匠。
 それぞれが、実にハロウィンらしく仮装している。
 とは言えども。師匠に関しては、『俺そーゆーの詳しくないんで、姫さん何か教えてくれません?』と二週間程前に聞かれたので、師匠がいつも着ている中華衣装から連想して……キョンシーをいい感じ伝えたところ、しっかりとそれらしい衣装を用意してきたようだ。

「師匠もいつも通りかっこいいよ」
「はは、そりゃどーも。姫さんのアドバイスのお陰っすね」
「ねぇーねぇーぼくは? ぼくはどうなの?」
「我も! エンヴィーばかり褒めるでない、我も褒めろ!!」

 シュヴァルツとナトラが子供のように詰め寄って来たので、

「シュヴァルツもナトラもよく似合ってるよ。シュヴァルツは黒猫で、ナトラは悪魔かな? 二人共可愛いよ」

 その頭を撫でながら褒めてあげると、

「まぁねぇ、ぼくってば超絶可愛い最強美少年だから!」
「ふふーんっ! そうじゃろうそうじゃろう、我はかわい──……む? いや、我は今、恐れ多い魔物なのじゃぞ!! そこは可愛いではなくかっこいいじゃろ!」

 シュヴァルツは胸を張ってふんぞり返り、ナトラは褒め言葉が不服だったのかリスのように頬を膨らませていた。
 追加で頭を撫でてあげると、ナトラは満足したのか少し落ち着いた。
 その時部屋の扉が開いて、今度はメイシアがお菓子がいっぱい入ったバスケットを持って現れた。その格好はずばり赤ずきんだった。
 ちなみにこの世界、赤ずきんのような御伽噺がある。なんなら、他にもグリム童話がモチーフの御伽噺をちらほら見かける。まぁ、日本の乙女ゲームブランドが作った世界だもんね、仕方無いわ。

「わあっ、とっても可愛くてお美しいですアミレス様! アミレス様のような魔女になら、わたし、眠らされても呪われても構わないです……っ」
「ふふ、私はそんな悪い魔女じゃないけれど……メイシアみたいな可愛い赤ずきんなら、私も食べちゃいたいかも」
「アミレス様にならわたし、全然食べられても構いません。えぇ、どんな意味合いでも」

 ぽっと顔を赤らめて、メイシアが私の体にしなだれかかる。今日のメイシアは随分と楽しそうだなぁ、ハロウィンだからかな。と微笑みながら考える。
 皆でお菓子をつまんでいると、諸々の準備を終えたイリオーデとアルベルトがジュース等を持って現れた。
 イリオーデは恐らく吸血鬼……かな? 噂によると、この話を聞いたメアリーとユーキがノリノリでイリオーデの衣装を用意したとの事で。髪型もオールバックになっていて、いつもと違った雰囲気にドキリとする。
 アルベルトはどこでそんな化粧をしたんだと聞きたくなるような、ザ・ゾンビメイク。そしてそれに合わせた少しボロボロの衣装。彼の目が濁っているからか、本当に動く死体のように見えてしまう。

「二人共よく似合ってるね、かっこいい!!」
「お褒めに与り光栄です。その言葉、後で必ずやメアリー達にも伝えておきます」
「本当はもう少し本物に寄せたかったんですが、流石に主君の前でそれは良くないかと思い……でも、主君にお喜びいただけたようで何よりです」

 どれだけ見た目や雰囲気が変わろうとも、二人のこう言った一面や笑顔は変わらない。それを再確認して、私はごほんっと咳払いをする。
 イケメン吸血鬼とイケメンゾンビが部屋に入って来た事により、役者は揃った。それじゃあ早速、ハロウィンパーティーといこうじゃないの!

「──皆、この前教えた言葉は覚えてる?」

 各自お好みのジュースを注いだグラスを持ち、私は皆に目配せする。全員がこくりと頷いたので、私はグラスを掲げて口火を切った。

「ハッピー!」
『ハロウィン──!!』

 私に続くように皆がグラスを掲げ、一緒にハロウィンと叫んだ。
 その後はトリックオアトリート合戦。この日の為に沢山のお菓子を用意していたので、イタズラをする隙はなかったが……それでもかなり楽しいハロウィンパーティーとなった。
 こんなに楽しいのなら──……前世でも、一度くらい参加してみたかったなあ。

「おーいアミレスー、このケーキ食っていいー?」
「あっ、ちょっとそれは駄目! 私が食べようとしてたケーキ!!」

 でも、今のこのハロウィンパーティーが凄く楽しいから、別にいっか。
 来年はシルフもハイラも私兵団の皆も、一緒にハロウィンパーティーが出来るといいなぁ。