「どうせなら二人も一緒に飲んでみましょうよ。ね、いいでしょ?」

 共犯者を増やそうと、猫撫で声を作って教唆犯となる。私の秘技・上目遣いおねだりはかなり打率が高い。だから……もしかしたらいけるかなーと思ったのだけど。

「ぐ……っ、お前は……どうしてそう……!!」
「いいえと言う選択肢が無いじゃないですかぁ!」

 予想以上にチョロかった。
 二人共、先程の心配など嘘のように、あっさりと空のグラスを差し出して来たのだ。
 寧ろこっちが心配になるレベルの単純さである。大丈夫なのかな、この子達……悪い奴に騙されたりしないのかな。心配になって来たわ。
 三人で乾杯してからお酒を飲む。弱いお酒だからかもしれないが……あまり酔ったりする事はなかった。
 ちょっぴり苦いね、でも癖があって面白いね。と未知の味に三人で目を丸くして、笑い合って。途中からはアルベルトにも席に座ってもらい、私はセツの頭を撫でながら、皆とこの貴重な席を楽しんだ。

「いつか……ちゃんと大人になったら、その時はわたしが最高級のお酒を用意しますから、またこうして一緒にお酒を飲みましょうね。アミレス様! 今度は二人きりで!」
「こうして一緒に、と言いながらオレとルティは除外するんだな」
「だってアミレス様と二人きりがいいんですもの。マクベスタ様とルティさんは邪魔です、邪魔。わたしとアミレス様の二人きりの甘い時間には不要なのです」
「……君、あの日以降オレ達の扱いが酷くなってないか?」
「うふふ。だって恋敵(ライバル)は早々に蹴落としておかないと、わたしを選んでいただけませんからね」
「蹴落とす、ね…………」

 お酒を飲み始めてから二十分ぐらいが経つと、二人共ついに酔ったのか、何やら黒い笑顔でバチバチと火花を散らしていた。
 それにしても、大人になったら……か。
 帝国では男女共に十七歳が成人年齢と定められており、周辺諸国でもだいたいが十七歳か十八歳だ。
 ならば、私は大人になれない可能性の方が高い。
 何せアミレス・ヘル・フォーロイトは──ゲームで十五歳の時に死ぬ。それも、ほぼ全てのルートで絶対に。

 その運命を変える為に何年もずっと足掻いて来たが…………本当に上手くいくか分からない。アミレスが十五年以上生きた事は、私が知る限り一度もなかった。
 だから……生き残りたいと思う反面、本当に可能なのかと不安に思ってしまう。私のやり方は正しいのかと、このままでいいのかと問うてしまう。
 それに、ルートにもよるがメイシアは十四歳で自決し、マクベスタもルートによっては十八歳とかで若くして死んでしまう。
 私達三人が一緒に大人になれる日が来る可能性は、悔しい事に、本来ならばゼロパーセントに近い事なのだ。

「……──もし、皆で大人になれたなら。その時は、またこうして一緒にお酒を飲もうね」

 例え何があっても、あなた達だけは絶対に大人になってね。もしも、私がいなくなっても……私の分も大人になってたくさんの思い出を作ってね。
 あなた達の事は絶対に死なせない。あなた達の未来は、私が絶対に守るから。運命も何もかもぶっ壊して、ハッピーエンドにしてみせるから。
 あなた達があんな風に苦しみ悲しむ事がないよう、私が頑張るから。あなた達との約束未満の約束を守る為に、私は頑張るから。
 だから、どうか。

「はい! 今から三年後が楽しみです!」
「そうだな。早く皆で成人して、今度こそ堂々と酒を飲もう」

 これからもずっと、笑顔でいてね。
 私の大切な──……大好きな、初めての友達たち。