(……認めて下さるのだろうか?)


 期待と不安が綯交ぜになり、心臓がバクバクと鳴り響く。何度も唾がせり上がり、落ち着かない。チラリと横目で見れば、殿下はようやく落ち着きを取り戻したらしく、居住まいを正していた。


「アレクよ、おまえはどう思う?」


 陛下は端的に、けれど恐ろしい質問をした。

 もしも殿下が『アーシュラ様を妃に望んでいる』と明確に言葉にすれば、事態はかなりややこしくなる。
 聖女と王太子の言葉ならば、王太子の言葉の方が重い。二人が結婚をすること自体は回避できるかもしれないが、その場合に俺とアーシュラ様が結ばれることはあり得ない。下手をすれば、護衛として側に居ることすら許されなくなるかもしれない。


(そんなの絶対、嫌だ)


 アーシュラ様はもう、かけがえのない俺の一部だ。一生守り抜くと――――幸せにすると決めた。離れ離れになるなんて無理だ。


(父や兄たちに迷惑など掛けたくない。掛けたくはないが)


 いざとなったら俺は、王家に背き、アーシュラ様を連れて旅に出る。何年掛かっても良い。納得いただけるよう努力をする。そう覚悟していた。

 想像よりもずっと早く、思っていたのとは違う形で判決の時を迎えることになってしまったが、遅かれ早かれ、という話だ。沙汰は早い方が良い。