1994年(平成6年)2月5日
 陽斗の2歳の誕生日を尚哉と3人でお祝いした。
イチゴの乗った丸いデコレーションケーキにロウソク2本。
 ほんとだったら、とても微笑ましい光景なんだろうけど、私の気持ちは複雑で、モヤモヤしたものがあった。

 陽斗の誕生日の8日前の、1994年1月28日に尚哉は戻って来た。
収まる所に収まったとでも言うのだろうか。
女とはどんな理由で別れたのか、私には本当のところは分からない。

 尚哉は家に戻って来て、こう言い放った。
「オレが謝ったら、オレが全部悪いみたいだから、オレは謝らない」
何故が夫の顔は半笑いだった。
そして「キャッシュカードは返すから、彩ちゃんが管理して」

えっ⁈、オレが 100%悪いんじゃないの?
浮気をしたのは私にも原因があると言うの?

 家庭にほんの少ししかお金を入れず、私を裏切り、暴力を振るい、全てを滅茶苦茶にして、謝罪の一言もないなんて……。
 半笑いの顔で「オレは謝らない」と言われたら、私だって大声で叫んで夫を責めたら、どんなに気持ちいいだろうと思うし、気持ちも少し軽くなったかもしれない……。

出来ないでいる自分がもどかしい……。