1992年(平成4年)8月15日
 二度目の無断外泊。一夜明けた翌日の深夜に、尚哉は帰って来るななり
「仕事で遅くなったから、会社に泊まった」と前回と同じセリフを言い、
私と目を合わせることなく、またすぐに寝てしまった。

 今から思い返してみると、最初の無断外泊の少し前から、帰宅時間が遅い日が増えていたことや、少しずつ態度の変化が現れていた時もあったが、育児に忙しくしていた私は、尚哉の変化を気にすることはなかった。

 二度目の外泊の後、尚哉はますます帰宅時間が遅くなっていった。
家でご飯を食べる事も少なくなり、態度も明らかに変わった。
いつも何かにイライラしているような感じで、怒りっぽくなってきた。

子供の泣き声に「うるさい!」
「オレは疲れているんだ!」
「なんとかしろ!」とか、
「こんな所に掃除機を置くな!」
などと細かい所まで、威圧的な言い方で私に文句を言うようになってきた。

 二度目の無断外泊から5日後、尚哉はまた無断外泊した。
帰って来たのは翌日の夜遅くだった。
しかしその日は「ただいま」も言わずに、私の前をただ通り過ぎた。まるで私の姿なんか見えないような態度で……。
そしていつもの様に、そのままベットに入って寝てしまった。

その尚哉の態度を見た時、私の心臓は不吉な音をたてて鳴り始めていた。