父が出て行った翌日のことだ。
声が出なくなったのは。
朝、目覚めると喉に感じた違和感。
何度か咳払いをしてみるも風邪とは違うその感覚に「あれ?」と口にする。
けれど、出したはずの“声”が出ないのだ。
違う言葉を発しても、何度それを繰り返しても。
慌ててリビングに向かうも、そこは電気一つ付いていない状態。
母はいつも私より先に出て仕事場へと向かう。
父は昨日出て行ったからいない。
(……自分でどうにかしないと。)
幸いにも近くには子供の頃からお世話になっている病院がある。
私は母に連絡を入れて、一人病院へと向かった。
「声帯に異常はなし……。失声症かもしれないね。何か最近、ストレスを感じたことはないかい?」
原因に心当たりがあった私はその後、心療内科を紹介される。
そこには母も付き添ってくれて、先生に「ゆっくり向き合いましょう」そう言われた。
父とは月に1回程メールでやり取りをするものの、失声症を患ったということは伝えていない。
学校には診断書をもらった翌日、母と一緒に伝えに行った。
保健室にもお世話になるかもしれないと思い畑中先生にも。
すると畑中先生は自分も昔、同じ症状を患ったことがあると話してくれた。