「返事は今度で良いって言うたのに。でも、ありがとう。……これからは保健室以外でも狩野ちゃんの隣におってもええ?」
私は両手で大きな丸を作ると、織田くんの隣へと移動した。
すると、織田くんの右手が私の左手に触れる。
そして、自然と指を絡ませた。
「え、メモとペンがなかった?俺筆記用具とノート持ってたのに」
保健室へと向かう途中、私がメモとペンを持っていないことをジェスチャーで伝えると織田くんはそう口にした。
(あっ、そっか。どうして気づかなかったんだろう)
「まぁ、でもおかげで?こんな熱い告白してもらえたもんな」
織田くんの視線の先には私の左腕。
「あーあ、消すん大変や。いいん?」
私はその言葉に何度も頷いた。
(そんなの気にならないよ。)
「じゃあ、俺が一生責任取らなあかんな」
織田くんはそう言うと再び私の手を取った。
油性マジックだといっても、一生は残らない。
そんなこと織田くんだってわかってるはずだ。
でも、その言葉に私は笑顔を返した──。