だけど、私には今すぐ織田くんを追えない理由がある。
それは、私が畑中先生から保健室を任されているからだ。
勝手に出ていくわけにはいかない。
(とりあえず、落ち着こう。)
今の想いをメモにまとめて、畑中先生が戻ったらすぐに織田くんを追いかける。
そう思ってペンを手に取った時、ギィィとドアの開く音がした。
「狩野さんお待たせ。さっき織田くんとすれ違ったわ」
私は笑顔でそう話す畑中先生に走るようなジェスチャーを見せ、軽い会釈をした。
そして、荷物も置いたままA棟へと続く廊下を走った。
その背中で「あらあら、青春ね」そんな声が聞こえた。