《わかりました!ありがとうございます》
私は最後にそう書いたメモを二人に向けて、頭を下げた。
(もう3分前だ。早く戻らないと。)
教室へと走り出した私の背中にミヤくんが「また俺らとも話そうね」そう叫ぶ。
振り向くと、隣で幸太郎くんも親指を立てていた。
私は一瞬だけ立ち止まると両手を使って大きな丸を作る。
それに二人は笑顔で答えてくれた。
ミヤくんと幸太郎くんの優しさに胸がいっぱいになる。
失声症を患ってからの私は人からどう思われるのか知るのが怖くて、用事がない限りは教室から出ない毎日を過ごしていた。
でも、一歩踏み出せばこんなにもあたたかい世界があったんだ。
たまたま織田くんやミヤくん、幸太郎くんが優しかっただけかもしれない。
だけど、教室にいるだけじゃ皆の優しさには気づかなかっただろう──。