メモを持った私は手前にいた幸太郎くんの肩をトントンと叩いた。

そして、さっき書いたばかりの文章を二人に見せる。


すると幸太郎くんは「あー!もしかして狩野乙葉ちゃん!?」と口にした。

続いて隣にいたミヤくんが「ああ、飴の子な」と付け加える。

失声症の子でもなければ、保健室の子でもない。飴の子。

気を遣ってそう言ってくれたのか、それとも本当に飴のイメージだったのか。

それはわからないが、少し気持ちが軽くなった。


「えっと、狩野乙葉ちゃんであってる?」

名前を呼ばれてから黙り込んだままだった私に今度はミヤくんがそう尋ねる。

(へ、返事しなきゃ……!)

私は二人に向かって大きく頷いた。


「あってて良かった。翔吾ならさっき保健室に行ったよ。なんか4限の途中から体調悪いってずっと寝てたから、そんなにしんどいなら保健室行けよって。な?幸太郎」


「ああ。本当は昼休みに行きたかったみたいだけどな」


「かっこ悪いところは見せたくなかったんだろうね。体調不良くらい誰にでもあるのに。ほら、あいつかっこつけだから。放課後もいると思うから、良かったら顔見に行ってあげて」

ミヤくんはそう言うと優しく微笑んだ。