見慣れた真っ白なドア。

頭上には『保健室』と書かれたプレート。

そこが私の目的地であり、毎日必ず顔を出す場所だ。

今日は靴がひとつもない。

ということは、誰もいないのかな……?

そんなことを考えながら、空っぽの下駄箱に靴を並べ、軽く握った拳でコンコンとドアをノックした。

古びたドアはこちらがどれだけ丁寧に開けようとしても、ギィィと鈍い音を立てる。

その音に気づいた養護教諭の畑中(はたなか)先生は「こんにちは、狩野さん」といつもと変わらない笑顔で私を迎え入れてくれた。

畑中先生は机付近の椅子に、私はソファーに、それぞれ定位置に腰を下ろす。

「調子はどう?」

挨拶を終えれば、真っ先にそう尋ねてくる先生。

私は予めポケットから出していたメモ用紙にペンを走らせた。

丁寧さよりもスピード重視。

だけど、ちゃんと相手に伝わるように。



《元気です!さっきお弁当と里菜ちゃんから貰ったドーナツも食べてきました》

そう書いたメモを先生の方へと向ける。