メモとペンはポケットにある。
だから、行ける。
それなのに、足はその場から一歩も動かない。
腕時計に目をやると次の授業が始まるまであと6分。
帰る時間に4分……いや走れば3分。
それでも残りは3分しかない。
私は一度深く深呼吸をすると、メモに《突然、すみません。7組の狩野です。織田くんはいますか?》そう書き殴った。
私が失声症を患ってからも、里菜ちゃんはずっと側にいてくれた。
畑中先生は私に居場所をくれて、寄り添ってくれた。
そして、織田くんは私と話すのが楽しいと言ってくれた。
皆がこんな私でもいいんだって思わせてくれた。
今の私は決してマイナスなんかじゃないんだって。
(よし、行ける。私ならできる!)
織田くんから二人の話はよく聞いていた。
確か茶髪でピアスを開けている方がミヤくん。
黒髪で八重歯が印象的なのが幸太郎くん。