飴を渡したいだけなら、畑中先生に預ければいいこと。
そもそも、友達やクラスメイトに配れば済む話だろう。
それなのに、わざわざ保健室で私を待つ理由って?
私が他の人と違うから?
ただの興味本位?
最初の頃はそう思った。
だけど、
─月曜日─
「狩野ちゃん、今日めっちゃ暑ない?」
─火曜日─
「今日は新作の飴持ってきたで」
─水曜日─
「次、英語の小テストやねん。狩野ちゃんとこはもうやった?」
─木曜日─
「さっき裏庭におった猫、俺に『何?』って話しかけてきた気がする!」
─金曜日─
「ほな、狩野ちゃんまた来週」
織田くんは初めて保健室を訪れた日から毎回、顔を出すようになった。
そして、少しだけ会話をして飴をくれると、友達のいるグラウンドへと走っていく。
畑中先生は「狩野さんのことが気になってるんじゃない?」なんて言うけれど、それは違うと思う。
確かに、もう織田くんがここへ興味本位で来ているとは思わない。
この数週間で織田くんが優しくて、人を好きなのがよくわかった。
そんな優しい彼は、きっと私を放っておけないのだろう。