「先生、翔吾は?」
「ここにいるわよ」
「「おーい翔吾。まだ終わんねぇの?」」
「あ、ミヤ!幸太郎!今から戻るわ」
「早くしろよ。休み時間終わるぞ」
「はいはい!ほな俺行くわ。またな狩野ちゃん」
織田くんはそう言うと保健室を出て行った。
(ほな……またな……狩野ちゃん)
織田くんが発した言葉をひとつひとつ繰り返す。
狩野ちゃんなんて初めて呼ばれた。
そもそも、入学してから他クラスの人と話したのって今日が初めてかも。
いつもの静かな時間に突然、嵐のように現れて嵐のように去っていった織田くん。
でも、不思議と心地の良い時間だった。
それはきっと、織田くんが私を特別視することなく、普通に接してくれたから。