《私は7組の狩野乙葉です》
「へぇ、こんな漢字なんや。会話だけやと伝わらんかったな。俺も書いてええ?」
私は返事の代わりにメモとペンを織田くんに渡した。
そこに『織田翔吾』と書かれる。
オダって小田じゃないんだ。
確かに会話の中だけではわからなかった。
私は今日、初めて筆談の良い所を見つけた。
「7組って校舎違うし、なかなか会わんよな」
うちの高校は1学年10クラスあるマンモス校。
同じ学年でも1組から5組はA棟、6組から10組はB棟と分かれている。
だから、同じ学年でも未だに名前は愚か顔すら知らない人も多い。
私達が自己紹介を終えると、コンコンとグラウンド側にある窓が叩かれた。
「はい」畑中先生はそう返事をしながら窓を開ける。
そこから顔を出したのは二人の男子生徒。