あたし、なにか変なこと言ったのかしら……。

前を歩く広い背中を見ながら悩む。
どうやら車で送ってくれるらしい、待っとけと言われその場に佇んでいると、ラフな格好から外に出てもおかしくない服装に着替えた翔太が居て。


来たときとは違う、ゆっくりとした歩調で家をあとにした。



エレベーターは3階で止まっており、最上階のここまでくるのに時間がかかる。


沈黙を破ったのは翔太だった。



「真知」

「なに、」



振り向いたあたしのほほに軽く唇を当て、何事もなかったかのように彼は前に向き直った。


な、なに……。

一気に体温が上昇して顔が火照るのがわかった。

両手で顔を挟んで赤さを懸命に隠した。


頬に、頬にっ………!

違う!
翔太らしくない!


家に着いて、一人になるまであたしは何がなんだかわからないくらい混乱していた。