『あの頃だって、……もう構想はできてたんだ』

『あの頃って。高校?』

『それ以外にいつがあんだよ』

『それって、あの日に、……あの日のことになにか関係があるの?』



思いがけない翔太の言葉に、肩に寄りかかったまま首だけを伸ばしたらそうだな、ってやけに覇気のない答えが返ってきてこれ以上問いただすことが出来なくて思考そちらに向かないように押しとどめた。


触れている肩からは緊張は伝わらない。
牧さんのような緊張はしていないみたいで少し寂しくなる。

彼女だけに見せる顔ってのがあってもいいじゃないの。



『終わったらさっさと帰ろうぜ』

『本当に今日の最終便で帰るつもりなの?』

『ああ、こんな人くさいところずっと居たくねぇっての。それにお前、明日仕事だろ?』

『ええ、仕事だけど。いいの?打ち上げとか』

『いい。俺は出ねぇ、牧とミキがいれば十分だろ。顔は出すけどな』



それ以上何も言葉を交わさなっくて十分なの。
時折思い出したように見上げれば翔太も見つめ返してくれて、バードキスを繰り返して微笑む。

外の喧騒なんて分からないくらい穏やかな時間だった。



ずっと考えてたことってこれなんだ。