どういう言葉をかければこの場にふさわしいのか分からなくて当たり障りのなきことを言えばああ、と短い答えが帰ってきて部屋を出て行ってしまった。

去り間際に彼女に二言三言声を掛けて出て行ったのを見て、すこし胸の奥がざわついた。


残されたあたしは都さんに向き直る。
彼女はにっこり笑ってあたしに行きましょうかと手を伸べた。



「もう名札は返してもらいますね、ここから先は賓客としてお迎えしますから」



差し出された手のひらにストラップつきの名札を置く。
それを握り締めて、ポケットに直した彼女はあたしににっこりと笑いかけ、行きましょうか、と促される。

歩き出した彼女の背を追いかけるために足を踏み出す。